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2016年6月21日 (火)

小櫃の干潟はなんで移入種ばかりになっちゃったのか

 毎年恒例の干潟実習が無事終了、先週報告書を提出した。

 この学生実習だけではなく、小櫃川河口干潟は東京湾における潮間帯フィールドワークの聖地かもしれない。ぼくは92年頃からこの干潟に出入りしているので、もうずいぶん年月が経つ。

 この頃の写真を見ると、けっこう干潟が青々している。
 アマモ、コアマモだけではなく、緑藻類が結構多かったと思う。アオサ類、アオノリ類、ミル類、ジュズモ類、ハネモ類、etc.

 ウミニナ類をザクザク踏んづけて歩いた記憶もある。
 この頃にはすでにホソウミニナばかりだったのか、まだウミニナも見かけることができたのか、はっきりした記録を残していないし、当時採集した標本も、今や手元に保管されていない。
 ただ、割と高い頻度でツボミガイがついていたのは確かだ。

 アメフラシ、タツナミガイ、ウミフクロウなんかも見たような気がするけれど、実習では一度も観察していない。そういえば去年はヤミヨキセワタがたくさん現れたっけ。

 つい最近までずっと同定をサボっていたポシェットトゲオヨコエビは、90年代後半にはすでに現れていたと思う。当時のデータは Jesogammarus sp.にしてあった。同時期、瀬戸内海で採集されたサンプルはアナンデールヨコエビに誤同定していた気がする。
 去年だったか、やっとこさ、ポシェットトゲオヨコエビとヒヌマヨコエビの原記載を入手して、何日もかけて見比べて、なんだかかえって訳が分からなくなってしまった。手元の標本が雌ばかりだったせいかもしれない。

 このほかにも数種のヨコエビ類が、もともと東京湾にはいなかったものだと思われる。

 ウメノハナモドキは、96年に実習生の卒論を手伝った時から気になっていた。当時はオキシジミの幼貝とかって言っていた気がする。で、採集標本を解剖して、スケッチして、フタバシラガイ科らしいとこまでは突き止めたけど、その先がずっとお手上げ状態だった。
 99年まで、実習データはフタバシラガイ科 sp. とかにしてあったと思う(ぼくの手元にはない)。ウメノハナモドキの名前に辿り着いてずいぶん経つけど、原記載は相変わらず入手できていないし、情報も乏しい。2015年にようやく少し、ネットを渉猟した結果が残せたかもしれない。
 ただ、今年の実習ではあまり検出できなかった。終日ものすごい強風だったから、たぶん実習生の小型種に対するセンサーが鈍化していたんじゃないかと思う。

 ツメタガイはホソヤツメタばかりになってしまったし、サキグロタマツメタはすっかり定着したし、リスガイ類もぽつぽつ見かけるようになったし。砂茶碗は何種類か見かける。

 Armandia くらいだろうか。相も変わらずうじゃうじゃいるのは。ここ数年はあまり持ち帰ってチェックしていないけれど、一応ツツオオフェリアということにしている。肉眼ではガペンオフェリアが混ざっていたとしても、たぶんちょっと見ではわからないし、ほかの種は顕微鏡がなければ絶対識別不可能だ。
 Nephtys はちょっと様相が変わったかもしれない。大型種がぽつぽつ見つかるようになった気がする。
 Glycera はここ数年、ほぼチロリしか取れていないかも。
 ゴカイ科の複数種、とりわけコケゴカイとツルヒゲゴカイを見かける頻度が減った気がする。
 スゴカイイソメの棲管は以前と同じくらいの密度ではないかと思う。ツバサゴカイ科の棲管はあまり見かけなくなってしまった。最干時刻の汀線付近でしばしばチマキゴカイが採れるようになった。干潟上の擬糞は、ほとんどタマシキゴカイじゃないかと思う。ぷよぷよした卵塊とセットで。

 そしてここ数年の実習では、ニホンスナモグリの巣穴をほとんど見かけていない。コメツキガニも潮間帯中部ではほとんど見かけない。十脚類は爬行性の種ばかりが目立つ。

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